シイラの刺身で食中毒になった件 ~シイラの刺身は本当に危ないのか?
- 2021年8月11日
- 釣り
ハワイでは「マヒマヒ」の名前で親しまれ、釣り人からも引きの強さで人気のあるシイラですが、「シイラの体表には毒がある」という噂はよく耳にします。刺身では絶対に食べないという人もいるようです。
私は刺身を食べて体が麻痺麻痺した訳ですが、結論から申し上げるとシイラの刺身だから危ないということではないと思っています。新潟・山形・高知県・長野県・中国地方の山間部では刺身としてよく食べられていることから、きちんと処理さえすればシイラの刺身がそこまで危険であるとは言えないと思います。
今回は食中毒になった経緯、症状、調べて分かったことなどを書いていきたいと思います。病院や保健所での検査を行った訳ではないため科学的根拠に乏しいですが、話半分で読んでもらえればと思います。
食中毒になるまでの経緯
いつものようにゴムボートで海に出てシイラを4匹捕まえることができました。釣行の様子についてはこちらの動画をご覧ください。
家に帰ってきてまずは急いでシイラを冷蔵庫に入れました。さばくときも一匹ずつ取り出し、さばき終わったら急いで冷蔵庫にしまうといった感じで温度管理を徹底。
今回は結構獲れたので実家におすそ分けしようと考え、刺身を少量口にしました。もちろん刺身にする前にまな板を洗い、身は塩・日本酒を混ぜた水でよく洗いました。私は実家におすそ分けする前に必ず毒見をしてから持っていきます。家族に変なもの食べさせる訳にはいきませんからね。これが20時ぐらい。
その後はいつものようにへべれけになり、YouTubeで動画などを見てグダグダと過ごして25時ごろに就寝。
翌朝になって前日の片付けをしようとしたのですが、どうにも体がかったるい。「昨日暑くて夏バテしたのかな?」ぐらいに考えて片付けを終えた後、昼前ぐらいに実家に向かいました。
実家で昼食をとり体がダルいので昼寝をしようとしたのですが、なんだか寒気を感じました。そしてとにかくダルい。なんか行動を起こそうと思っても体が全力で拒否する感じです。わずかに関節も痛い。
その後2時間ぐらい布団の中にいたのですが、どうやら発熱しはじめたようです。
時期が時期なだけに「すわ!コロナか?」と思い、急いで実家から撤収してセルフ隔離しました。この時点ではまだコロナか夏風邪だと思っています。
とにかく寝なければならないということで氷結500mlを3本ガブ飲みし、「さぁ、寝るか」というときになんだか症状が治まってきました。食欲もでてきたのでカップラーメンを食べて就寝。
翌朝になると症状がすっかり治ってしまいました。私はこの10年ぐらい風邪をひかないような体力バカなので、一度風邪を引くと結構長引きます。今回もその覚悟をしていたのですが、風邪にしては治るのが早すぎる。
ここで「シイラの刺身は危ない」という情報を思い出しました。
表皮粘液毒
「シイラ 刺身 危ない」などで検索すると腸炎ビブリオ菌と表皮粘液毒の情報がよくでてきます。
表皮粘液毒は魚が外敵から身を守るためのもので、ハコフグやキタマクラもこの毒を持っています。ハコフグやキタマクラは観賞用として飼育することがあるそうですが、同じ水槽で飼うと他の魚が死んでしまうそうです。ただし毒性は弱く、人間に影響を及ぼすことはないと言われています。
過去にシイラと同じ水槽の魚が死んだのかもしれませんね。で、「毒」という文字からシイラの刺身は危ないという話が一人歩きしているように感じます。
がんばって調べたんですが、表皮粘液毒が原因で食中毒になったという症例を私は見つけることができませんでした。また、厚生労働省のホームページには食中毒を引き起こす細菌やウィルスについて記述されていますが、表皮粘液毒についての記述は載っていません。
よって表皮粘液毒が原因ではないと判断。
腸炎ビブリオ菌
シイラの体表には毒があると言われる根拠のもうひとつが腸炎ビブリオ菌です。ですが、こちらもちょっと大袈裟に言われているなと思います。腸炎ビブリオ菌は海の中を漂っている細菌で、シイラに限らずどの魚の体表にも存在するものです。
この菌による食中毒を防ぐ対策は非常に簡単で、表面を真水でよく洗うこと。私は今回これが甘かったように感じます。
実はシイラによる食中毒にはもうひとつ原因となる化学物質があって、まだ腸炎ビブリオ菌が原因であると断定できません。
ヒスタミン
サバやカツオなどでよく話題になるヒスタミンですが、シイラも体内にヒスチジンを多く含む魚です。ヒスタミン食中毒はヒスタミンを多く含む魚を食べることで発症します。
ヒスタミンは食品中に含まれるヒスチジンにヒスタミン産生菌の酵素が作用して生成されます。ヒスチジンを含む食品を常温に放置すると、食品中のヒスタミン産生菌が増殖してヒスタミンが生成されます。釣った魚をほったらかしにしたり、調理中の切り身を長い時間常温で置いておくとやべーという話です。
じんま疹、嘔吐、下痢、腹痛、舌や顔面の腫れ、頭痛、発熱等のアレルギー反応ですが、私は今回の食中毒の原因がヒスタミンである可能性は低いと考えていました。
まずは温度管理にかなり神経を使っていたこと。また私は過去にヒスタミンが原因であると考えられる食中毒になったことがありますが、そのときは全身に蕁麻疹ができて大変だった覚えがあります。今回は蕁麻疹がまったく出ていません。
ヒスタミン食中毒の一番やっかいなところは、一度ヒスタミンが生成された食品は熱を加えても食べられないことです。そこで腸炎ビブリオ菌とヒスタミンのどちらが原因なのかを調べるため、食中毒になった切り身の残りを加熱して食べてみました。もちろん少量ですが。
結果、問題ありませんでした。腸炎ビブリオ菌で確定です。
なぜ食中毒を疑わなかったのか
私はヒスタミン以外に2度食中毒で苦しんだことがありますが、そのときは下痢と嘔吐がひどかったです。座って出そうか、上から出そうか迷うようなひどさで、毎回ニュースを見て思うんですが保健所に検査に行く人いるじゃないですか。あれ、よく行く気になるなぁと思って見ています。だってトイレから離れたくなかったですもん。
今回食中毒であると疑わなかったのは下痢と嘔吐がほとんどなかったためです。「前日飲みすぎたかな?」程度の症状だったためまったく頭をよぎりませんでした。
1日で症状が治まった理由ですが、一応は調理器具を丁寧に洗ったことが功を奏したのかなと思います。たださばいた数が多かったため洗い切れなかったのかもしれません。考えてみると前にも刺身を食べた翌日にちょっとお腹の調子が悪いかなと思うときがあって、魚の処理方法に問題があった可能性があります。
「シイラの皮を引いたまな板と刺身を切り分けるまな板は別にしろ」と言われますが、我が家の狭いキッチンにもう一枚まな板を置くようなスペースはありません。
そこで今後の対策としてキッチン用のアルコール消毒を用意することにしました。私が購入したのはこちら。
刺身を切る前に包丁とまな板をこちらで除菌します。水気があると効果が薄れるので、ある程度乾かしてから使用するようにしてください。そして、この対策はシイラ以外の魚でも行ったほうがよいと思います。
それにしてもシイラの刺身の話題になると腸炎ビブリオ菌と表皮粘液毒ばかり取り上げられていますが、ヒスタミンのほうが危険性が高いと思うんですよね。もっとこちらの話を広めたほうがよいのではないでしょうか。シイラを釣ったら温度管理に十分に注意してください。